「極低出生体重児に対する経母乳ヒトサイトメガロウイルス感染症対策」
日本学術振興会 学術研究助成基金助成金 基盤研究(C)
課題番号 20K08217
研究代表者 水野克己
研究期間 2020年4月~2024年3月
配分額 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
【概要】
母親がサイトメガロウイルス(CMV)IgG陽性の場合、乳腺組織にてCMV再活性化が起こり、後天性CMV感染症を起こす。このため超早産児における経母乳CMV感染対策は重要な問題である。CMVは62.5℃30分のパスツール化により感染性はなくなるが、本機器はいまだ一般的ではないこと、また、生理活性物質の減少も大きい。
我々は人工乳にHCMVを添加した後に電子レンジ(MW)処理を行い、HFL-Ⅲ細胞表面に母乳をかけたところ感染細胞はなかった(Pediatr Int 2019;61:1227) 。人工乳と母乳では同じMW設定でも温度上昇に違いがあること、母体で再活性化したCMVでは細胞感染性に違いがあると考え、以下の実験を行った。
実験①:MW処理する際の母乳温度変化を実測する。MWでの母乳加温はCDCも温度ムラの点から禁止しているが、実際にMWの条件を変えて温度変化を計測したところ、以前報告されたような温度のばらつきはなく実行可能であると判断された(J Hum Lact doi: 10.1177/08903344211047452)。
実験②:CMVIgG陽性の母親から得られた母乳100mlを1)無処理、2)200W60秒、3)500W60秒でMW処理を行い、その後にHFL-Ⅲ細胞にて細胞感染実験を行った。その結果、2)3)ともに無処理よりは感染性は低下したが、一定程度の細胞感染は認めた。そのため、実験2として50mlと100mlとで500W60秒で処理を行い、その後、細胞感染実験を行った。結果として50mlのほうが細胞感染はさらに減少した。母乳100mlを500W40秒の処理では分泌型IgA抗体、ラクトフェリン、TGF‐βなど生理活性物質に有意な減少は見られなかったが、さらに温度を上げると生理活性物質の減少も増えることが予測され、最適なMW設定を決めなければならない。