ドナーミルクを介した乳児への病原体感染を防ぐため、海外の母乳バンク運営ガイドラインではホルダー低温殺菌(62.5℃, 30 min)を行うことが推奨されており、日本でも同様に実施しています。一方で、低温殺菌処理により母乳中の生理活性物質が減少することも知られています。
低温殺菌機には、水を使用しないドライ式と温水式の2種類があり、日本財団母乳バンクではドライ式2種類、温水式1種類を使用していました。しかし、これらの機械が母乳成分に及ぼす影響を比較した報告はこれまでありませんでした。私たちは各機械による成分変化率の差について検討を行い、ドライ式は温水式と比較して免疫物質の減少率が10%以上高いこと、機械ごとの冷却時間の差は減少率の差に影響しないことを明らかにしました(Tanaka M et al., Int Breastfeed J, 2025)。
この結果を受け、現在は全てのドナーミルク処理に温水式低温殺菌機を使用しています。さらに、ドライ式低温殺菌機でも免疫物質の減少を抑制できる処理方法について、引き続き検討を行っていきます。



