ドナーミルクによる乳児への病原体感染を防ぐため、海外の母乳バンク運営ガイドラインではホルダー低温殺菌(62.5℃, 30 min)を行うことが推奨されており、日本でも同様に実施しています。一方で、低温殺菌処理により母乳中の生理活性物質が減少することも分かっています。
また、低温殺菌機には水を使用しないドライ式と温水式が存在し、日本財団母乳バンクではドライ式2種類、温水式1種類を用いています。しかし、ドライ式及び温水式による低温殺菌処理が母乳成分に及ぼす影響を比較した報告はありませんでした。
私たちは機械による成分変化率の差について研究を行い、ドライ式は温水式と比較して免疫物質の減少率が10%以上高いこと、冷却時間の差は減少率の差に関与しないことを明らかにしました。現在、機械毎の加熱時間および温度の違いが減少率の差に関与しているかを検討しています。ドライ式低温殺菌機を用いても免疫物質の減少が抑制できるような低温殺菌処理方法について、引き続き検討を行っていきます。