電子レンジによる熱処理は、経母乳サイトメガロウイルス感染対策として有効であるだけでなく、冷凍母乳の解凍方法としても実用化が期待されています。想定される使用場面としては、お母さんが不在の際にお父さんが解凍した母乳を与える場合や、保育園で預かった母乳を解凍する場合などが挙げられます。一方で、電子レンジによる冷凍母乳の解凍は、成分損失や火傷のリスクから一般的には推奨されていません。
そこで私たちは、臨床応用に向けて電子レンジによる解凍が母乳成分や温度ムラに及ぼす影響を検討しました。加熱前の処理方法や母乳バッグの素材を変更し、最適な解凍方法を検討した結果、電子レンジ加熱による成分損失は臨床的に問題となるものではなく、加熱条件を工夫することで成分損失や温度ムラを最小限に抑えられる可能性が示されました(Ito M et al., J Hum Lact, 2025)。今後、電子レンジの機種間での再現性などについても検討を進めることで、電子レンジ加熱が安全な母乳解凍方法の選択肢の一つとなる可能性があります。

